クラウドファンディングは、スタートアップ企業や新規事業を始める際に、多くの企業や個人に利用されている資金調達の方法です。その柔軟性と広範囲な支援者との接点を持てる点から、ゲーム開発においても非常に有効的に活用されています。
実際に、CAMPFIRE(国内の有名なクラファンプラットフォームの1つ)を通じて支援額が1,000万円を超えたプロジェクトは多数あり、さらに1億円以上の資金を集めた事例も存在します。
例えば、『東方ダンマクカグラ』は1億9,000万円以上の支援を集め、『マジカミ オフライン版』も1億4,000万円を超える資金を調達しました。こうした成功例からも、クラウドファンディングがゲーム開発における有力な手段であることがわかります。
本記事では、これらの成功プロジェクトをランキング形式で紹介し、その成功の理由や魅力的なプロジェクトを作るためのポイントを解説します。
アニメクラファン・支援額ランキングTOP10

クラウドファンディングで成功したゲームプロジェクトをランキング形式でご紹介します。それぞれの支援額や支援者数から、プロジェクトの魅力を掘り下げます。

TOP1 東方Project公認二次創作の音楽ゲーム 東方ダンマクカグラ
『東方ダンマクカグラ』をスタンドアローン版にリビルドしたい!!
支援額 | 193,277,283円 |
支援者数 | 6,995人 |
URL |
概要
『東方ダンマクカグラ』は、東方Project公認の二次創作音楽ゲームで、約120曲以上の人気アレンジ楽曲が実装されています。
2022年10月28日にサービス終了した同ゲームを、再び楽しみたいという多くのファンの声に応える形でスタンドアローン版としてリビルドすることを目指しています。
リターン
プロジェクトの目的は、元のゲームの魅力を引き継ぎつつ、新たなストーリーやゲームプレイを提供することです。リビルド版では、より多くの楽曲や新しいキャラクターが追加される予定です。また、支援者には特典としてゲームコードやアルバム、アートブックなどが用意されています。
支援額に応じて、新規テーマ曲の制作や新ゲームモードの実装、Nintendo Switch版のパッケージ制作など、複数のストレッチゴールが達成されました。
プロジェクト後の展開
『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』というタイトルで、SteamおよびNintendo Switch向けにリリースされました。

概要
オンラインゲーム『マジカミ』のサービス終了(2023年10月31日)に伴い、オンラインサービスが終了した『マジカミ』を、オフライン環境でプレイできるようにPCゲームとして復活させることを目指していました。これにより、サービス終了後もゲームを楽しめるようにすることを目的としていました。
メインシナリオ完結: オンライン版では未完となっていたメインシナリオを、オフライン版で完結させることを目標としていました。これにより、物語の結末を見届けたいというファンの要望に応えようとしていました。
リターン
支援額に応じて、未実装メインシナリオのボイスドラマ化が段階的に決定され、最終的にエンディングから第5部までの収録が確定しました。
リターンとしては、オフライン版PCゲームに加え、メインシナリオ完結版台本集、デジタルCG集、ボイスドラマ、リアルグッズなどが用意されています。

概要
PCゲームブランドALcotの20周年記念にして最終作となる『CloverMemory’s』の制作を目指すプロジェクトです。
原画にあゆま紗由氏、橋本タカシ氏、真崎ケイ氏、楽曲制作にMANYO氏、Manack氏を迎え、ALcot処女作『CloverHeart’s』の系譜作品として制作されます。
リターン
支援額の増加に伴い、各種演出強化やサブキャラクター「如月勿」のミニルート追加、特別版ラジオの収録など、複数のストレッチゴールが達成されました。
リターンとしては、ゲーム本体ダウンロード版、トールケース版、サウンドトラック、原画集、特製グッズ(タペストリー、トートバッグ、ピンズなど)、サイン色紙、追加イベント制作権(CG付きの追加イベント)などがありました。

概要
Wright Flyer Studios × Aiming が贈る大人気アニメRPG「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか〜メモリア・フレーゼ〜」(以下、ダンメモ)のサービス終了に伴い、これまでの思い出を未来に繋げるためのメモリアルプロジェクトとしてCAMPFIREで実施されました。
リターン
メモリアルブックの制作: これまでのダンメモの歴史を振り返るメモリアルブックが制作されました。ゲーム内のイラストや設定資料、開発スタッフのコメントなどが収録され、ファンにとって貴重な一冊となっています。
ゲーム内音楽の配信: ダンメモで使用された数々の楽曲が配信されました。ゲームを彩った音楽をいつでも聴けるようになりました。
プロジェクト後の展開
オフラインイベントの開催: サービス終了後、オフラインイベント「神盛グランドフィナーレ」が開催されました。開発スタッフや声優などが登壇し、ファンとの交流が行われました。

概要
『魔法少女ノ魔女裁判』は、魔法が存在する独自の世界観と裁判を組み合わせたアドベンチャーゲームです。13人の少女たちの中から魔女(殺人犯)を炙り出すというシステムに焦点を当て、救いのない物語を描いています。
リターン
リターン:ゲーム本体SteamDLキー、キービジュアル複製原画、桜羽エマ役「三木谷奈々」のサイン色紙などリアルグッズが用意されています。
ストレッチゴール:クラウドファンディング期間中には段階的にストレッチゴールが設定されており、 スチル10枚追加(1000万円)、Nintendo Switch版への移植(2,000万円)フルボイス化(3000万円)など、すべてのストレッチゴールが達成されました。
プロジェクト後の展開
2025年中のリリースを目指しており、各種イベントでの試遊版提供も予定されています。

概要
開発者:インフルエンサー「なるにぃ」氏が初めて手掛ける独自のアクションゲーム「誓いノ淵」を制作するためのプロジェクトです。
音楽制作:ゲームは個人制作でありながら、著名な音楽家であるTECHNOuchi氏、桜庭統氏、仲野順也氏、Emi Evans氏が参加し、豪華な音楽陣が作品を彩ります。
リターン
リターン内容:支援者には、ゲームの先行プレイ権やオリジナルグッズ、キャラクターの設定を決める権利、開発日記の閲覧権など、多彩なリターンが提供されました。

7位 PCノベルゲーム・MUSICUS!の移植プロジェクト
「MUSICUS!」PS4&Nintendo Switch移植プロジェクト
支援額 | 40,743,597円 |
支援者数 | 1,484人 |
URL |
概要
ゲーム概要:2019年に美少女ゲームブランドOVERDRIVEの最終作としてリリースされたWindows用ノベルゲーム『MUSICUS!』を、PlayStation 4およびNintendo Switch向けに移植するプロジェクトです。
移植版の特徴:移植版では、PC版の内容を基に、シナリオの加筆・修正、CGの追加、ユーザーインターフェースの改善、音楽の追加などが行われ、特にゲーム内のライブシーンの演出強化が計画されています。 これにより、家庭用ゲーム機向けに最適化された高品質なゲーム体験が提供されることが期待されています。
開発者コメント:OVERDRIVE代表のbamboo氏は、前回のクラウドファンディングでの支援に感謝し、今回のプロジェクトを通じてさらに多くのユーザーに『MUSICUS!』を届けたいと述べています。
受賞歴:『MUSICUS!』は2019年の萌えゲーアワードで「シナリオ賞」と「主題歌賞」を受賞しています。
リターン
リターン内容:支援者には、移植版ゲームのパッケージやデジタルコンテンツ、限定グッズなど、多彩なリターンが提供されました。

8位 Muv-Luv Tactics カーリダーサの悪夢の開発支援
『Muv-Luv Tactics カーリダーサの悪夢』クラウドファンディング
支援額 | 38,185,912円 |
支援者数 | 1,523人 |
URL |
概要
『マブラヴ』シリーズの世界観を基盤にした一人用戦術シミュレーションRPG(S-RPG)の制作を目指すクラウドファンディングです。
開発のビジョン:没入感を重視し、戦術的な選択と人間ドラマを融合させた深い体験を楽しむ。『マブラヴ』シリーズのファンや新規プレイヤー向けに魅力的なゲーム体験を追求している。
資金の活用: 支援者からの支援額の13%が「ご協力費」として使用され、クリエイターの活動資金を増やす。
リターン
リターン内容:オリジナルグッズやゲーム内に支援者が登場する特典など、11種類のコースが用意されています。特に、最高額の支援では、ゲーム内に自分自身が登場する特典が用意されています。
プロジェクト後の展開
活動:クラウドファンディングの終了までのカウントダウンや、支援者へのお礼配信なども行われました。

9位 ジャパニーズホラー・シビトマギレの開発プロジェクト
PS4/Switch『シビトマギレ(仮)』心霊ホラーADV 開発プロジェクト
支援額 | 30,672,993円 |
支援者数 | 1,473人 |
URL |
概要
ゲーム概要: 『シビトマギレ(仮)』は、ジャパニーズホラーの静かな恐怖をテーマにした心霊ホラーアドベンチャーゲームであり、『死印』『NG』に続く“心霊ホラーシリーズ”の最新作として開発されました。開発チームは、前作の成功を受けて、より洗練されたグラフィックや音響効果を取り入れることで、プレイヤーに新たな体験を提供することを目指しています。
リターン
リターン内容: 支援者には、ゲームのデジタル版や限定グッズ、開発資料など、多彩なリターンが提供されました。
ネクストゴール: プロジェクト期間中に複数のネクストゴールが設定され、2,000万円達成時には収録ボイスの増加や主人公の追加衣装、恐怖シーンビジュアルの追加が、2,500万円達成時には未登場キャラクターの追加や死亡シーン表現変更システムの実装、主題歌制作、3,000万円では追加DLC、小説化、イベント開催が追加されました。

10位 MakeS~TGS2018への参加プロジェクト
きっと朝が好きになる!『MakeS -おはよう、私のセイ-』応援プロジェクト!
支援額 | 30,602,075円 |
支援者数 | 2,932人 |
URL |
概要
アプリ概要: 『MakeS -おはよう、私のセイ-』は、スマートフォン向けの目覚ましアプリで、ユーザーの生活をサポートするバーチャルパートナー「セイ」との交流を楽しむことができます。ユーザーは自分の声を録音し、その声を基にキャラクターの音声を生成することができます。また、アプリ内では様々なシナリオやシチュエーションに応じた音声を楽しむことができ、ユーザーの創造性を引き出す内容となっています。
リターン
リターン内容: 支援者には、セイの描き下ろしイラストデータ、オリジナルグッズ(タペストリー、ハンカチ、ブランケットなど)、限定ボイス、イベント招待など、多彩なリターンが提供されました。
プロジェクト後の展開
プロジェクト目的: 東京ゲームショウ2018への出展を目指し、セイとの特別なひと時を体験できる特設ブースの設置や、VRを用いた新たな体験の提供を計画していました。そして、実際に東京ゲームショウ2018への出展は達成しました。
なぜ支援を集めることができたのか

クラウドファンディングで成功を収めたゲームプロジェクトには、いくつかの共通点があります。これらのポイントを抑えることで、初めてプロジェクトを行う初心者でも支援を集めやすくなります。
既存ファンベースの活用と市場ニーズの把握
多くの成功プロジェクトが既存作品のリブートや移植案件として展開されており、これは以下の理由によるものです。
- 市場での実績
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例えば、『東方ダンマクカグラ』や『MUSICUS!』のように、過去の実績がある作品は、初めての挑戦と比べて支援を受けやすくなります。
- ファンからの支持
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長年コンテンツを推している根強いファン層がいることで、プロジェクト開始時から支援が集まりやすくなります。
- 新規顧客の開拓
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移植やリブートによるプラットフォーム拡大で、さらに多くのユーザーにリーチできます。
これらの要素を活用することで、より多くの支援者にアピールできるのです。
明確な目標設定とストーリー性
成功プロジェクトには、単なる製品開発以上の「共感を呼ぶストーリー」が存在します。
- 『CloverMemory’s』
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ブランド20周年という節目を祝う記念的意味合いが大きく、ファンの心を捉えました。
- 『誓いノ淵』
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人気インフルエンサーが初の独自開発に挑むという挑戦的なストーリーが話題になりました。
- 『シビトマギレ』
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人気ホラーシリーズの最新作として、ホラー好きなユーザーの期待感を高めました。
これらの事例から、「プロジェクトの背景や目的」をしっかりと伝えることがいかに重要かが分かります。
充実したリターン設計とインセンティブ構造
クラウドファンディングにおいてはリターンの豊富さや特別性など、充実したリターン設定が支援者を引き付ける大きな要因です。成功事例に共通するリターン設計の特徴を紹介します。
- 価格帯の幅広さ
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支援額に応じて、手軽なものからプレミアムなリターンまで幅広く用意することで、多様な層を取り込めます。
- 多様性のある特典
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デジタルデータ、物理グッズ、ゲーム内特典など、選べる楽しさを提供します。
- 特別な体験
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『誓いノ淵』ではキャラクター設定権や声優参加権が人気を集めました。『MakeS』ではVR体験会が注目されました。
支援者が「特別感」を感じられるリターンを設計することが成功の鍵です。
著名クリエイターとの協業
著名なクリエイターや既存IP(Intellectual Property:ゲーム業界における「IP」は、アニメーション・漫画の版権(著作権)を指すことが一般的)の活用も、プロジェクトの信頼性を高めるポイントです。
- 『誓いノ淵』
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著名音楽家が参加し、作品にさらなる魅力を加えました。
- 『Muv-Luv Tactics』
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長年のファンに支持されるIPを活用することで、多くの支援を集めました。
初心者であっても、コラボレーションや協業を通じてプロジェクトの価値を高められます。
ターゲット層を明確にし、ストーリー性やリターン設計に力を入れることで、支援を集めやすいプロジェクトを作ることが可能です。
魅力的なプロジェクトを作る方法

クラウドファンディングで多くの支援を得るためには、以下の要素を組み合わせてプロジェクトを構築することが重要です。それぞれのポイントを具体例とともに解説します。
段階的な目標設定とコミュニティ育成
プロジェクトを進行させるうえで、ネクストゴール(ストレッチゴール)の設定は非常に有効です。
例えば、『シビトマギレ』の事例では以下のように進められました。
- 明確な段階目標
支援額が2,000万円に達した際には「恐怖シーンのビジュアル強化」、2,500万円では「新キャラクター追加」といった具体的な追加要素を設定しました。 - フィードバックの活用
支援者から寄せられる意見や要望を参考に、プロジェクト方針を柔軟に修正しました。 - コミュニティとの交流
定期的な進捗報告や、SNSを通じたコミュニケーションを実施します。
段階的な目標設定と、支援者との密な関わりがプロジェクトの信頼性を高め、支援を持続させる原動力となります。
ストレッチゴールの有効的な設定方法については、こちらの記事で解説しています。
プロジェクトの差別化要素の明確化
プロジェクトが成功するためには、市場における独自性を明確にする必要があります。
『MakeS -おはよう、私のセイ-』の事例では、以下のような差別化が功を奏しました。
- 独自の機能
声の録音や生成機能など、競合製品にはない機能を強調します。 - 明確なターゲット
忙しい日常をサポートするアプリとして、日常生活に付加価値を求めるユーザー層を狙いました。 - リアルイベントとの連携
東京ゲームショウへの出展を通じて、新規ユーザーを直接獲得しました。
独自性を打ち出すことで、支援者に「このプロジェクトに参加する価値がある」と思わせることが重要です。
透明性の高いプロジェクト運営
支援者からの信頼を得るには、運営の透明性が不可欠です。
『Muv-Luv Tactics』の事例から学べるポイントは以下です。
- 資金の使途を明確に説明
支援額の13%をクリエイター活動支援に充てるなど、資金の具体的な使い道を提示しました。 - 進捗状況の定期報告
プロジェクトページやSNSでの報告を通じて、支援者の期待を維持します。 - お礼配信や交流イベント
支援者と直接対話する機会を設け、感謝の意を伝えました。
透明性の高い運営により、支援者との信頼関係を築くことができます。
長期的な価値提供の設計
支援者がプロジェクトを支援したいと思う理由には、完成後の価値も含まれます。
『MUSICUS!』の事例では、以下が注目されました。
- オリジナルコンテンツの追加
新規シナリオやCGの追加によって、既存ファンだけでなく新規ユーザーにも訴求します。 - UIや体験の改善
プラットフォームごとに最適化された設計で、ゲームの遊びやすさを向上させました。 - 新規ユーザーの開拓
コンソール版の発売により、PC以外のプラットフォームにも進出。
これにより、完成後も継続的に楽しめるプロジェクトとして高く評価されました。
- 段階的な目標設定
- 差別化の意識
- プロジェクトの透明性
- 長期的な価値提供
これらのポイントを押さえ、バランス良く取り入れることが重要です。プロジェクトの総合的な運営方法については、こちらの記事でわかりやすく解説しています。
結論(Conclusion)

クラウドファンディングは、ゲーム開発を成功させるための強力なツールとして、多くのクリエイターや企業に利用されています。本記事で紹介した成功事例が示すように、既存IPの活用から新規タイトルの開発まで、様々なプロジェクトで1,000万円を超える支援を集めることが可能です。
成功の鍵まとめ
- 既存ファンベースの活用
- 明確な目標とストーリー性
- 魅力的なリターン設計
- 透明性の高い運営
クラウドファンディングは、資金調達だけでなく、プロジェクトの認知度向上やファンとの絆を深める貴重な機会でもあります。プロジェクトの規模に関わらず、独自の価値提供と透明性の高い運営を心がけることで、支援者の共感を得られるでしょう。もちろん、支援者にとって魅力的なプロジェクトやリターンを用意するためには、緻密な計画と支援者の視点に立った設計が不可欠です。プロジェクトの準備や運営には、多くの専門的な知識が求められることも事実です。
プロジェクトの成功に向けて専門的なアドバイスが必要な方は、ぜひLEAGUEにご相談ください。クラウドファンディングの企画から実施まで、無料でご相談に対応いたします。お気軽にご連絡ください。

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