
チャリティーイベントの資金をクラウドファンディングで集めて大丈夫なの?



誰でもプロレスにふれる機会を作るという、意義のあるプロジェクトだから支援は集まったわ。
群馬県の青空の下で開催された「チャリティープロレス」――。この一見シンプルなイベントの裏側には、覆面MANIAが仕掛けた「ファンと地域が一体となって夢を創る」クラウドファンディング(以下、クラファン)の新しい形がありました。
屋外という開放的な空間で、誰もが無料で観戦できるプロレスイベント。一見、収益面で難しそうなこの挑戦が、なぜ多くの支援者の共感を集め、目標金額である約60万円以上の支援を集めたのでしょうか?
このプロジェクトには、新規事業や地域貢献型のイベントを考える経営者の方にとって、参考になるヒントが詰まっています。明確なストーリー設計、体験価値を重視したリターン、そして継続的な情報発信――。これらの要素がどのように組み合わさって成功につながったのか、具体的に見ていきましょう。
覆面MANIAがクラファンを行った理由と結果


まず、この注目すべきプロジェクトがどのようなものだったのか、その背景と結果を紹介します。
なぜ「青空×無料観戦」というスタイルを選んだのか
「群馬県で、青空の下、誰もが自由に観戦できるチャリティープロレスを無料開催したい」――覆面MANIAのプロジェクト「青空の下『チャリティープロレス』で元気を届けたい!」は、この思いから始まりました。
通常、プロレス興行はチケット販売で収益を得るのが一般的です。無料開催は運営的に非常にハードルが高く、リスクも大きい選択肢です。それでも覆面MANIAがこのスタイルを選んだのには、明確な理由がありました。
一つ目は、地域性を活かした新しい観客体験の創出です。屋外の開放的な環境であれば、プロレスに馴染みのない地域住民や家族連れ、高齢者や子どもたちも気軽に足を運べます。「ちょっと覗いてみようか」という軽い気持ちで立ち寄れる場所にすることで、潜在的なファン層を掘り起こせるのです。
二つ目は、イベントへの参加そのものを支援の形に変える共感型支援の実現です。無料で観戦できる代わりに、クラファンを通じて「このイベントを応援したい」という気持ちを形にしてもらう。観客は単なる消費者ではなく、プロジェクトの共創者になるのです。
コロナ禍が生んだ必然的な選択
プロジェクトオーナーのミステル・カカオは、覆面レスラーとしてだけでなく、精巧なマスクを製作するクラフトマン、そしてプロモーターとしての顔も持っています。覆面MANIAは、メキシコ式プロレス「ルチャリブレ」の文化やマスクの魅力を日本に広める活動を続けてきました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、屋内会場の確保が困難になり、イベント自体も大きく制限される時期が続きました。観客間の距離や換気問題など、安全面の課題をクリアする必要があったのです。
屋外イベントという選択は、こうした状況下で必然的に生まれたものでした。制約をチャンスに変え、青空の下という開放感と安全性を両立させたスタイルが、プロジェクトの大きな特徴となったのです。
チャリティーとしての地域還元
このプロジェクトのもう一つの核心は、チャリティーという要素です。単に試合を見せるだけでなく、障がい者施設の利用者や地域の子どもたち、高齢者なども招待し、無料で観戦できるようにしました。
プロレスを通じて世代や立場の違いを超えたつながりが生まれる――これは、地域イベントとしての交流効果を最大化する仕組みです。誰かのためという明確な目的があることで、支援者は自分の支援がどう役立つのかをイメージしやすくなります。
CAMPFIREを通じて立ち上げられたこのプロジェクトは、プロレスという娯楽と社会貢献を融合させ、地域住民とファンが一緒に作り上げる共創型プロジェクトとして、多くの注目を集めることになりました。


当初設定された目標金額は58万円。期間は2021年10月7日~31日までの約1ヶ月間ほどと短い期間ながらも、67人の支援者から65.1万円の支援を集め、見事目標金額を超える結果となりました。
クラファンの基本とオリジナリティあふれるリターン事例


クラファンの基本的な流れは、意外とシンプルです。
クラファンの基本と流れ
クラファンを簡潔に説明すると、「インターネットを通じて「こんなことをやりたい!」と発信し、それに共感した人たちから少しずつ資金を集める仕組み」です。
従来の銀行融資との大きな違いは、審査の厳しさやスピード感。銀行だと事業計画書を作って、審査を受けて…と数週間から数ヶ月かかることも珍しくありません。一方クラファンなら、アイデアと熱意次第で、数日で目標額に到達することも可能です。
クラファン実施までの主な流れは、以下の通りです。
「何のために資金を集めるのか」というプロジェクトの核を固めます。例えば、新商品の開発費用・新店舗の開店資金など、具体的で共感を呼びやすいテーマを設定することが成功への第一歩です。
支援してくれた人への感謝のしるしである「リターン」は、プロジェクトの魅力を大きく左右する重要な要素です。商品やサービスだけでなく、アスルクラロ沼津の事例のように、その事業者だからこそ提供できる「特別な体験」は非常に人気があります。
プロジェクトの準備が整ったら、CAMPFIREやMakuakeといった専門のプラットフォームに登録し、プロジェクトページを公開します。そして公開後は、SNSやプレスリリース、既存顧客へのメルマガなどを活用し、一人でも多くの人にプロジェクトの存在を知ってもらうための地道な情報発信が不可欠です。
覆面MANIAのリターン設計
プロジェクトに人気が集まる上で重要な要素はリターン設計にあります。そして、覆面MANIAは「体験性+限定性」を生かした巧いリターン設計をしていました。
支援者はモノが欲しいだけでなく、「このプロジェクトの一部になりたい、支援した証が欲しい」という体験的価値を求めています。
鉄板の限定記念品
クラファンのリターンとして定番のクラファン限定アイテム。比較的手に取りやすい価格帯のものから、数点のみの希少な限定品まで、幅広いバリエーションが用意されています。
覆面MANIAの事例でも、全選手サイン入りポスターやサイン色紙など、プロレスファンの心をくすぐるラインナップが揃っていました。
サイン入り色紙・クリアファイル
オリジナルカラーTシャツ
全選手の直筆サイン入り色紙


地域コラボレーション
これは、群馬県指定の伝統工芸品『高崎だるま』とのコラボ商品です。地域貢献を掲げるプロジェクトとして、これ以上ない説得力を持ちます。自社のリソースだけでなく、地域の伝統工芸や他社と組むことで、リターンの魅力は格段に上がります。
大会限定だるま(名入れ可)サイン入り


プロレスファンが喜ぶ体験・商品リターン
プロジェクトオーナーであるミステル・カカオ氏は、精巧なマスクを製作するクラフトマンでもあり、その強みを活かしたリターンを用意していました。ここでしか入手できない一点物であり、10万円に達する高額リターンとしても注目を集めました。
群馬キャットのセミプロフェッショナルマスク
群馬キャットが使用した試合用マスク
試合用(プロ仕様)イージーオーダーマスク


価格帯はエントリー層向け(2,500円〜5,000円)、中間層向け(8,500円〜15,000円)、コア層向け(75,000円〜100,000円)と用意されており、多様な支援層に合わせた価格帯を用意している点も非常に戦略的です。
覆面MANIAの成功事例から見る、成功するクラファンのコツ


覆面MANIAの事例から、私たち中小企業経営者が学び、自社のプロジェクトに応用できる成功のコツを3つのポイントに絞って解説します。
ストーリーと目的を共感の軸として据える
このプロジェクトでは、「青空で観戦できるチャリティープロレスを通じて、元気と希望を届けたい」というストーリーが一貫して明確に示されています。
支援者はただお金を出す対象ではなく、共感して共に作る仲間として扱われているのです。「地方の子どもたちにもプロレスを近くで見せたい・コロナで疲弊した地域を盛り上げたい」といった、感情に訴える動機を前面に出すことで、多くの人の共感を引き出します。
- なぜそれをやるのか
- 誰のためなのか
- どんな価値を届けたいのか
リターン設計は「体験性+限定性」を重視する
先ほど詳しく見たように、覆面MANIAのリターンは単なる物品提供に留まりません。「自分だけが得られる価値」「イベントに関わっている実感」を設計に織り込むことで、支援者のモチベーションを高めています。
クラファンのリターンを考える際、多くの初心者が陥りがちなのが「商品を安く提供すればいい」という発想です。しかし、それだけでは支援者の心は動きません。
このように、支援者(ターゲット)が「この機能は、まさに自分のビジネスに役立つ!」と自分ごと化できるメリットを明確に提示したことが、多くの支持を集めた大きな要因です。
あなたの会社が新商品を開発するプロジェクトなら、以下のリターン設計が考えられます。
- 開発過程を共有する
- 支援者限定の工場見学会
- 商品名の投票権
情報発信と進捗可視化で応援の輪を拡げる
覆面MANIAのプロジェクトでは、進捗報告、支援呼びかけ、残り日数のお知らせなど、定期的な情報発信が徹底されていました。
オフライン施策
宣伝用のポスターを作成
群馬県内でポスターを張り出してくれる店舗を募集
チラシを置いてもらえる場所を開拓
メディア連携
テレビ局(群馬テレビ株式会社(GTV))ケーブル局(株式会社多摩テレビ(TTV))に働きかけ、後援を取り付ける
オンライン施策
新リターンの追加を随時、活動報告で発信
支援者への感謝コメント
これらの施策により、支援者の関与感が高まり、シェアや再支援を促す効果が生まれます。クラファンは立ち上げて終わりではなく、期間中の継続的な発信により成功率は大きく変わります。
まとめ


覆面MANIAの「青空チャリティープロレス」プロジェクトは、クラファンが単なる資金調達の手段ではなく、ファンと共に夢を形にするプラットフォームであることを明確に示しています。
- 明確なストーリー(共感の軸)
- 魅力的なリターン(体験+限定性)
- 継続的な情報発信(応援の輪)
これらのポイントは、これからクラファンに挑戦しようと考えているすべての経営者、事業主の方々にとって、非常に重要なヒントとなるはずです。
本記事を読んで、クラファンって面白そうと感じた方は、ぜひともクラファンに向けた準備を始めてください。「クラファンっていっても、何から初めたらいいのかわからいよ…」という方は、弊社LeaguEにおまかせください。
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