
松江城はどうしてクラウドファンディングをやったの?



クラウドファンディングをして、結局どうなったの?
新規事業を立ち上げる際、最も頭を悩ませるのが資金調達と顧客の獲得ではないでしょうか。特に地域に根ざした事業や文化的価値を重視するプロジェクトの場合、従来の資金調達方法では限界があることも多いものです。
そんな中、全国的にも有名な松江城が実施したクラウドファンディング事例は、多くの経営者にとっても参考になるポイントが詰まっています。2024年11月から約2か月半の期間で、目標金額500万円を大きく上回る800万円以上の支援を集めることに成功。しかも、単なる資金調達にとどまらず、全国に松江城のファンコミュニティを形成し、持続的な関係性を築き上げました。
本記事では、この松江城クラウドファンディングの成功要因を詳しく分析し、あなたのビジネスにも応用できる具体的なノウハウをお伝えします。
松江城クラウドファンディングが成功した理由


松江城のクラウドファンディングが多くの人の心を掴んだ最大の理由は、単なる資金集めではなく明確な物語やユニークなリターン設計があったことに由来します。
明確な物語と節目の活用
2025年は松江城にとって特別な年でした。天守閣が国宝に指定されてから10周年、そして明治時代の廃城令を乗り越えて保存されてから150周年という、二つの大きな節目が重なったのです。このような歴史的な意味を持つタイミングを活用することで、みんなで一緒にお祝いしようという共感を呼ぶストーリーを作り上げました。
経営者の視点から見ると、これは「なぜ今このプロジェクトが必要なのか」という理由を明確にすることの重要性を示しています。あなたのビジネスでも、創業記念日や業界の転換点、社会的な変化などを物語として活用することで、より多くの人に共感してもらえるプロジェクトを作ることができるでしょう。
段階的な目標設定による成功体験の演出
松江城プロジェクトは、最初の目標を500万円に設定し、達成後にさらに800万円という新たな目標を設定しました。この段階的なアプローチ(ストレッチゴールの設定)は、支援者に成功しているという実感を与え、さらなる支援を促す効果的な手法でした。


そして、2025年6月28日・29日にかけて、「お城EXPO in 松江 2025」は無事開催されました。


これは新規事業においても応用できる考え方です。最初から大きすぎる目標を掲げるよりも、達成可能な段階的な目標を設定し、小さな成功体験を積み重ねることで、顧客やパートナーからの信頼を段階的に獲得していくことができます。
事例から知る・支援者を仲間に変える戦略の具体例


松江城のクラウドファンディングがこれほど多くの共感を集めた最大の理由は、単なる資金調達を目的としなかった点にあります。このプロジェクトの本質は、誰もが松江城の歴史文化の継承に直接参加できる参加型の仕組みをデザインしたことなのです 。
体験価値を重視したリターン設計
松江城クラウドファンディングの特徴的な点は、単なる記念品ではなく体験に重点を置いたリターン設計でした。
最高額の「城主コース」(100万円、限定1名)では、天守最上階に支援者の名前が刻まれた木札を掲示し、イベント終了後にその木札をプレゼントするという特別な体験を提供しました。また、「一日城主体験」では、甲冑や時代衣装を身にまとい、専属のおもてなし武者に案内されながら城内を見学するという、まさにお殿様・お姫様気分を味わえる贅沢な体験を用意しました。


これらのリターンに共通するのは、支援者が特別感と参加感を同時に味わえる設計になっていることです。単に商品を受け取るだけでなく、プロジェクトの一部になったという実感を得られるのです。
名前掲載による「歴史の一部」になる体験
特に興味深いのは、支援者の名前を城内やパンフレットに掲載するリターンです。これは物理的な価値は小さいかもしれませんが、自分も松江城の歴史の一部になれたという精神的な価値は計り知れません。


ビジネスへの応用ヒント
中小企業の経営者にとって、この手法は非常に参考になるでしょう。例えば、新店舗オープンの際に支援者の名前を店内に掲示したり、新商品開発における支援者を共同開発者として紹介したりすることで、顧客との深い絆を築くことができます。
ユニーク&体験型リターンの提供
集まった資金の使い道もユニークでした。大規模イベント「特別版 お城EXPO in松江」の開催費用や、記念グッズの制作はもちろんのこと、なんと人気ゲーム・フォートナイトの仮想空間(メタバース)に松江城をリアルに再現するプロジェクトにも活用されています。


これにより、現地へ足を運べない人でも、バーチャルで城の魅力を体験できるという、新しい文化財の楽しみ方を提案しています 。
支援を呼び込むクラウドファンディングの実践方法


松江城のクラウドファンディング成功事例は、私たち事業者がクラウドファンディングを実践する上で、非常に重要ポイントを教えてくれます。
資金使途の明確化が生む信頼
松江城プロジェクトでは、集まった資金の使い道を具体的に公開していました。「特別版お城EXPO in松江」の開催費用、記念グッズの制作、メタバース(仮想空間)での松江城再現など、支援者が「自分のお金がどのように使われているか」を明確に理解できる仕組みを作りました。
これは、特に中小企業のクラウドファンディングにおいて重要なポイントです。大企業と比べて知名度や信頼度で劣る場合が多い中小企業にとって、透明性の確保は信頼獲得の上で特に重要なポイントです。
多世代に向けた企画の多様性
松江城プロジェクトでは、子ども向けの忍者体験、全国の小学生を対象とした「山陰の城研究コンテスト」、戦国時代をテーマにした展示など、幅広い世代が楽しめる企画を用意しました。
これは、ターゲットを狭く絞りすぎず、多様な顧客層にアプローチすることの重要性を示しています。一つの事業で多世代の顧客を獲得できれば、より安定した収益基盤を築くことができます。
メタバースを活用した新しい参加形態
松江城プロジェクトの革新的な点の一つは、メタバース(仮想空間)を活用した取り組みでした。人気ゲーム「フォートナイト」内に松江城をリアルに再現し、現地に来られない人でもバーチャルで城内を楽しめる仕組みを作りました。
これは、地域性のある事業でありながら、全国・世界に向けてサービスを展開するハイブリッド戦略の好例です。デジタル技術を活用することで、物理的な制約を超えて多くの人にアプローチできる可能性を示しています。
進捗報告による継続的な関係構築
プロジェクト期間中、松江城チームは定期的な進捗報告を行い、支援者との継続的なコミュニケーションを維持しました。SNSやプロジェクトページを通じて、準備の様子や関係者の思いを発信し続けることで、支援者の関心を最後まで維持することに成功しました。
これは新規事業においても重要な考え方です。顧客との関係は一度の取引で終わるものではなく、継続的なコミュニケーションを通じて長期的な関係を築いていくことが、事業の持続的な成長につながります。
クラウドファンディングの基礎的な知識や実行方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。


まとめ


松江城クラウドファンディングの成功は、単なる資金調達手段を超えて、持続可能な成長モデルとしてのクラウドファンディングの可能性を示しています
- 共感を呼ぶ「なぜ?」を語る
- 支援者が主役になる体験を設計する
- プロセスを徹底的に共有し、信頼を築く
- 一度きりの関係で終わらせない
松江城が取り組んだクラウドファンディングによる挑戦は、伝統と最新テクノロジー、そして人々の想いを繋ぐことで、文化支援の新たな可能性を示してくれました。これからクラウドファンディングを検討している方は、松江城の事例を参考に、あなたのビジネスならではの物語と体験価値を考えてみてください
本記事ではクラウドファンディングの基礎の部分をお話しましたが、プロジェクトの準備や運営には、多くの専門的な知識が求められることも事実です。プロジェクトの成功に向けて専門的なアドバイスが必要な方は、ぜひLEAGUEにご相談ください。
LEAGUEは今回紹介した海外クラウドファンディングのみならず、国内クラウドファンディングにおいても多くのサポート実績があります。クラウドファンディングの企画から実施まで、無料でご相談に対応いたします。お気軽にご連絡ください。
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