
神社の経営って厳しいって聞いたけど、クラファンで支援って集まるの?
岡山県岡山市に鎮座する吉備津神社。この神社は、古代から続く信仰の場であり、国宝に指定された建築を有する文化遺産でもあります。そんな由緒正しき神社ですが、少子高齢化や地域の人口減少、寄付文化の変化など、伝統的な収入源(お賽銭・奉納金)だけでは、施設の維持や活動の継続が難しくなっている現状があります。
そんな現代の課題を乗り越えるために選んだ手段がクラウドファンディング(以下クラファン)であり、結果的に300人以上の支援により1800万円を超える支援金が集まりました。
今回は、一見ビジネスとは縁遠い存在である神社の事例・吉備津神社の取り組みを紐解きながら、あらゆるビジネスに応用可能なクラファン成功の本質に迫ります。これから地域貢献や文化保全に挑戦したい方、事業アイデアをクラファンで実現したい中小企業経営者の方はぜひご一読ください。
成功の背景:なぜ吉備津神社は多くの支援を集められるのか


クラファンの具体的な手法に入る前に、今回の事例である吉備津神社がどのような場所なのかを解説します。
歴史的価値の高い吉備津神社
吉備津神社は、岡山市に鎮座する非常に由緒ある神社です。主祭神である大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)は、この地を平定した英雄として知られ、その鬼退治の伝説は、あの有名な桃太郎の原型になったとも言われています。
この神社の特筆すべき点は、建築様式にもあります。国宝に指定されている本殿と拝殿は、吉備津造りと呼ばれる全国で唯一無二の構造「比翼入母屋造(ひよくいりもやづくり)」を誇ります。これは、他の神社では見られない、極めて貴重な建築遺産です。


吉備津神社は単なる歴史遺産ではなく、年間を通じて多彩な祭事を行い、地域住民の精神的な拠り所として今も深く根付いています。約400メートルに及ぶ美しい廻廊(かいろう)は観光名所としても人気で、地域経済にも貢献しています。
こうした「桃太郎伝説のルーツかもしれない」という物語性や「全国唯一」という希少性は、それ自体が強力なブランド資産です。
また、催事や観光名所といった地域の方々と接する機会があることにより、地域や参拝者という「ファンコミュニティ」との間に強い絆が築かれています。
なぜ神社がクラウドファンディングに挑戦したのか
神社の場合、従来の主要な収入源は以下のとおりです。
主な収入源
お賽銭や奉納金
地域の氏子(うじこ)からの寄付
祈祷料や御朱印などの収入
観光収入
しかし、日本全体で進行する少子高齢化と地域の人口減少により、これらの収入源だけでは大規模な修復工事や設備投資が困難になってきたのが現実です。
境内の中で最も古く重要な社殿である南随神門は、全長360mに渡る廻廊の途中にあり、多くの参拝者が通る社殿です。前回の大規模な修復から約100年が経過した現在、朱や胡粉で彩られた部分も色あせ、動物の爪痕や落書き等の害も見受けられるなど、経年劣化によりその美しさが損なわれていることは否めません。(READYFORより)
これら問題を解決するため、国宝である本建再建600年という節目にあわせ、クラファンサイト・READYFORにてプロジェクトが行われました。主な目的は南随神門の改修・美装化であり、美しい彩色を復元を目指しました。


プロジェクト開始当初から注目を集め、約半月で目標の500万円を達成。そのため、門の内部や基礎部分、石垣などにも改善範囲を広げる、第2目標1500万円を掲げました。最終的には1828万円の支援を集め、第2目標も達成しています。
既存の顧客だけでは新規事業への投資資金が不足している、新しい販路開拓が必要、といった課題は多くの中小企業が抱えているものです。
資金調達の1手段として、クラファンは中小企業の強い味方になる存在です。
クラウドファンディングの戦略的メリット


神社という非営利の組織がクラウドファンディングを活用する意義を知ることで、中小企業が応用できる本質的なメリットが見えてきます。ここでは、吉備津神社クラファンが多くの支援を獲得した理由を解説します。
全国・世界規模でのリーチ拡大
神社での従来の寄付は地域住民に限定されがちのため、集めることができる資金にも限界がありました。
一方、クラウドファンディングの最大の利点は、インターネットを通じて全国、あるいは世界中の人々に、プロジェクトの魅力を直接届けられる点にあります。また、クラファン単なる資金調達に留まらず、下記のような効果もあります。
- ファンの可視化と共感の獲得
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吉備津神社クラファンは「文化財を守り、歴史を未来へつなぐ」という公益性の高い目的が備わっていました。結果、自分たちの大事な文化を守りたいという多くの支援に繋がっています。
- 絶大なPR効果
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吉備津神社という世界的にも有名が行ったプロジェクトということもあり、大きな注目が集まりました。くわえて、プロジェクトが魅力的であれば、SNSで拡散されたり、メディアに取り上げられることも珍しくありません。
吉備津神社は従来ではまかないきれなかった資金調達を、クラファンという現代の支援方法を活用することにより達成しました。
リターン(お礼品)設計の戦略
クラウドファンディングでは、支援者へのリターンが支援決定の重要な要因となります。吉備津神社クラファンでは、他では体験できない特別なリターンが用意されていました。
クラウドファンディング限定デザインの御朱印帳
ヒノキの植樹体験コース
神事体験・正式参拝コース
大祭への参列体験コース
御本殿再建600年記念イベントへご招待コース
半月祈祷・御本殿再建600年記念イベントへ招待コース
リターン設計のポイントはモノの対価ではなく、特別感と体験価値を提供することです。神社という場所を使った各種コースは、日常では体験できないというワクワク感を刺激します。
ビジュアルコンテンツの戦略的活用
クラウドファンディングは基本的にオンラインでの訴求となるため、写真や動画などのビジュアルコンテンツが非常に重要です。
吉備津神社のプロジェクトページでは、以下のような写真が効果的に使用されました。
修復が必要な部分のbefore写真
神社の美しい四季の風景
地域の人々や神職の方々の表情
伝統行事の様子
あわせて、クラファンに懸ける情熱、プロジェクト実現への想いを具体的に語ることにより、共感を何倍にも増幅させます。
初心者でも安心!失敗しないための3つの鉄則


最後に、初めてクラウドファンディングに挑戦する方が、着実に成功へ近づくための実践的なポイントを3つご紹介します。
スモールスタートで始める
最初から大きな目標を掲げる必要はありません。
吉備津神社クラファンは目標500万円という大きな金額を設定していましたが、クラファン初心者の方は目標金額を30~50万円程度の達成しやすい範囲に設定し、成功体験を積むことが大切です。小さな成功は、社内外への信頼醸成につながり、次のより大きな挑戦への貴重な足がかりとなります。
SNSとLINEを徹底活用する
プロジェクトの成否は、開始直後の初速で決まると言っても過言ではありません。
プロジェクトページを公開してから宣伝を始めるのではなく、開始前からX(旧Twitter)やInstagram、そして特にLINE公式アカウントなどで「近々、こんな挑戦を始めます!」と告知し、事前登録者を募りましょう。
プロジェクトが始まってすぐに購入をしてくれる可能性が高い支援者(見込み支援者リスト)が、スタートダッシュの強力なエンジンになります。
クラファン終了後の報告を丁寧におこなう
クラファンが成功して資金が集まったら、それで終わりではありません。支援者との信頼関係を未来につなげるために、集まった資金の使い道やプロジェクトの進捗を、写真付きで丁寧に報告することが極めて重要です。
誠実なアフターフォローは、「この会社を応援してよかった」という満足感を生み、次のプロジェクトや商品購入につながる未来への投資となるのです 。
クラウドファンディングの基礎的な知識や実行方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。


まとめ


今回は、吉備津神社の事例を通じて、中小企業がこれからクラファンを検討している方でも実行できる、クラファン成功の秘訣を探りました。
- 全国的にアピールことを念頭においた設計
- ここでしか体験できない特別なリターンを設計する
- 支援者の心を動かす共感ストーリーをビジュアルと文言で訴求する
吉備津神社という一見、伝統的で保守的に見える組織でさえ、新しい手法にチャレンジし、見事に成功を収めました。この事例が証明しているのは、業種や規模に関係なく、適切な戦略と準備があればクラファンは成功できるということです。
本記事ではクラファンの部分的なことのみをお話しましたが、プロジェクトの準備や運営には、多くの専門的な知識が求められることも事実です。プロジェクトの成功に向けて専門的なアドバイスが必要な方は、ぜひLEAGUEにご相談ください。
LEAGUEは国内外を問わずクラファンにおいても多くのサポート実績があります。クラファンの企画から実施まで、無料でご相談に対応いたします。お気軽にご連絡ください。
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