
法隆寺もクラウドファンディングをやったの?どうして?



国が支援することとは違うの?
伝統的な融資や補助金だけでなく、新しい資金調達とファンづくりの手法として注目されているのがクラウドファンディングです。
今回は、1400年以上の歴史を持つ世界遺産・法隆寺が、クラウドファンディングという現代的な資金調達方法を用いて1億5700万円もの支援を集めるという大成功を収めた事例を紹介します。
一見、ビジネスとは無縁に思えるこの取り組みには、実はあなたの会社の事業を成長させるための貴重なヒントが詰まっています。
この記事を読めば、クラウドファンディングの本質的な価値と、自社で応用するための具体的な戦略が見えてくるはずです。
法隆寺が挑んだクラウドファンディング・背景と成功の裏側


なぜ世界的にも有名な法隆寺がクラウドファンディングを行うことに至った経緯と結果について紹介します。
法隆寺は、聖徳太子によって607年に創建された、日本が世界に誇る最古の木造建築群です。しかし、その長い歴史を持つ法隆寺も、近年のコロナ禍で深刻な資金難に直面していました。感染拡大前には年間約65万人が訪れていた参拝者は20万人台まで激減し、寺の貴重な財源である拝観料収入は半分以下に落ち込んでしまったのです。
国宝などの修繕には国の補助がありますが、日々の境内整備や樹木の手入れ、参拝者のための設備投資といった日常の維持管理にその補助は使えません。このままでは、1400年守り抜いてきた環境を次世代へ引き継ぐことができなくなります。
そんな危機的状況を打開するために選ばれたのが、インターネットを通じて多くの人から支援を募るクラウドファンディングでした。


「世界遺産法隆寺ー1400年の歴史遺産を未来へー」と名付けられたプロジェクトは、当初の目標金額2,000万円を、なんと募集開始からわずか1日で達成。最終的には約7,500人の支援者から、目標の7倍以上となる1億5,700万円もの資金が集まりました 。これは、寺社仏閣のクラウドファンディングとしては国内最高額を記録する、前例のない大成功となりました。
1.5億円を集めた・3つの共感戦略


1.5億円を超える支援を集めた成功の裏には、単なる資金集めにとどまらない、巧みな3つの戦略がありました。これは、あらゆるビジネスにおける顧客との関係構築に応用できる、非常に重要なポイントです。
ここでは、クラウドファンディングで支援を集める3つの共感戦略について解説します。
ストーリーテリングの巧妙さ
法隆寺のプロジェクトは単なる資金援助のお願いではありませんでした。1400年という長い歴史、聖徳太子という歴史上の偉人との関わり、そして現在直面している危機的状況を組み合わせ、支援者の心に響く物語として構成されていました。
この手法は現代のマーケティングでも重要視される、ストーリーテリングの典型例です。
ストーリーテリングとは、物語を使って情報を伝え、聞き手の理解や共感を深める手法のことです。単に事実やデータを伝えるだけでなく、体験談やエピソードを交えることで、より印象的に、記憶に残るように情報を伝えることができます。
ビジネスへの応用ヒント
あなたの会社も、ただ良い商品ですとアピールするだけでなく、開発の裏にある苦労や、事業を通じて解決したい社会課題などをストーリーとして語ってみましょう。弱みや課題をオープンにすることが、かえって顧客や取引先の強い共感を呼び、ファンを増やすきっかけになるかもしれません。
参加のハードルを下げる工夫
クラウドファンディングの大きな魅力は、地理的な制約を超えて多くの人が参加できることです。法隆寺のプロジェクトには全国各地から支援が集まり、普段は奈良を訪れることが難しい人々も気軽に参加できました。
この参加のハードルを下げるという発想は、新規顧客獲得において非常に重要です。従来のビジネスモデルでは接点を持てなかった層にもアプローチできる手段を見つけることで、市場を大幅に拡大できる可能性があります。
ビジネスへの応用ヒント
物理的な距離がなく・遠隔から支援を行いやすくするクラウドファンディングですが、リターン金額を多数用意することで参加のハードルを下げることができます。数百円から支援できるお手軽なリターン、数十万円もする高額リターンなど、支援者が満足して支援できるリターン設計を心がけましょう。
特別な体験を生み出すリターン設計
クラウドファンディングの魅力の一つに、支援額に応じた返礼品(リターン)があります。法隆寺はこのリターン設計においても、支援者の心を掴む工夫を凝らしました。
用意されたのは、単なる記念グッズではありません。クラウドファンディング限定の記念参拝券や特別な御朱印など、「ここでしか手に入らない」「お金では買えない価値」を持つものばかりでした。


これらの返礼品は、支援者に自分の支援が特別な形で返ってきたという満足感を与えます 。特に、限定イベントへの参加といった体験型のリターンは、支援者にとって忘れられない思い出となり、法隆寺との絆をより一層強いものにしたことでしょう。
ビジネスへの応用ヒント
顧客に対して、割引やモノの提供だけでなく、特別な体験を提供できないか考えてみましょう。例えば、新商品の先行体験会への招待、開発者との座談会、工場見学ツアーなど、顧客を特別扱いする取り組みは、価格競争から一歩抜け出し、熱心なファンを育てるための強力な武器となります。
支援者の心を掴む仕組み作り


法隆寺のクラウドファンディングが単なる資金調達を超えて成功した背景には、ここまでに紹介したポイントの他に支援者が参加すること自体に価値を感じる仕組み作りが盛り込まれています。ここでは支援者の心を掴み、クラウドファンディングを成功に導くポイントを解説します。
一体感と誇りを醸成する取り組み
法隆寺のクラウドファンディングでは、支援者の名前を公式サイトに掲載することで、「自分の名前が法隆寺の歴史に刻まれた」という特別感を演出しました。この施策により、支援者は単なる寄付者ではなく、法隆寺を守る仲間としての意識を持つことができました。


現代のビジネスにおいても、顧客を消費者ではなくコミュニティの一員として捉える視点が重要になっています。顧客が企業やブランドに対して愛着や帰属意識を持てる環境を作ることで、長期的なロイヤルティを育成できます。
広報戦略と透明性確保の重要性
法隆寺のクラウドファンディング成功において、見逃せないのが優れた広報戦略です。伝統的なイメージの強い寺院が現代的な資金調達手法に挑戦するという意外性は、それ自体が大きな話題性を持っていました。
- 課題の明確化と共感の醸成
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法隆寺は自らが直面している課題を包み隠さず公開しました。コロナ禍による収入減、維持管理費の増大、将来への不安など、リアルな状況を率直に伝えることで、多くの人々の共感を得ることができました。
企業経営においても、時には弱みや課題をオープンにすることが、かえって顧客や取引先との信頼関係を深める結果につながることがあります。完璧を装うよりも、誠実さを示すことの方が重要な場面も多いのです。
- 継続的な情報発信
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クラウドファンディング期間中だけでなく、終了後も定期的に進捗状況や成果を報告し続けています。支援者に対する「報告義務」を果たすことで、次回以降のプロジェクトへの信頼も蓄積されていきます。
この継続的なコミュニケーションは、顧客との長期的な関係構築において極めて重要です。一度の取引で終わらせず、継続的な価値提供を通じて関係を深化させることが、持続的な成長の基盤となります。
クラウドファンディングの基礎的な知識や実行方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。


まとめ


法隆寺のクラウドファンディング事例は、私たちに多くのことを教えてくれます。それは、資金調達とは、単にお金を集める行為ではないということです。
- 自社の抱える課題やビジョンを正直に語り、共感を呼ぶこと。
- 顧客を支援者・パートナーとして巻き込み、特別な体験を提供すること
- 一度生まれたつながりを大切に育て、長期的な信頼関係を築くこと
法隆寺の取り組みは、事業規模の大小を問わず、すべての経営者にとって参考となる事例です。自社の独自性を見つめ直し、新たな顧客との接点を模索することで、これまでにない成長の機会を見つけることができるかもしれません。
本記事ではクラウドファンディングの基礎の部分をお話しましたが、プロジェクトの準備や運営には、多くの専門的な知識が求められることも事実です。プロジェクトの成功に向けて専門的なアドバイスが必要な方は、ぜひLEAGUEにご相談ください。
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