近年、注目を集めている「クラウドファンディング」。多くの人々が集まって資金調達を行うこの仕組みは、中小企業や個人事業者にとって新しいアイデアやプロジェクトを実現するための強力なツールとなっています。しかし、具体的にはどのような仕組みで、どのように活用できるのでしょうか?
本記事では、クラウドファンディングの基本的な仕組み、種類、歴史、メリット・デメリット、目標設定・プロジェクトゴールの設定方法、そして成功事例について詳しく解説します。クラウドファンディングに初めて挑戦する方でも理解しやすい内容となっておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
クラウドファンディングの基本
ここでは、クラウドファンディングの基本的な仕組みと、プロジェクトの立案から資金調達、実行に至るまでの流れを解説します。
クラウドファンディングの基本と意味
クラウドファンディングは、アイデアやプロジェクトに対してインターネットを通じて多数の人々から資金を募る手法です。「クラウド(群衆)」と「ファンディング(資金調達)」を組み合わせた造語で、「クラファン」と略されることもあります。
プロジェクトオーナーは自身のアイデアや計画を詳細に説明し、それに共感した支援者が小口の出資を行います。通常、目標金額を設定し、その達成を目指してキャンペーンを展開します。
クラウドファンディングの仕組みと流れ
クラウドファンディングの具体的な流れは以下のステップで行われます。
プロジェクトの実行前
クラウドファンディングで成功するためには、多くの人から「共感」を得られるプロジェクトを立案することが重要です。資金調達の目的は公的なものから個人的なものまで幅広く設定できますが、共感を呼ぶストーリーやビジョンを明確に伝えることが鍵となります。
各サイトには「ツール系のプロジェクトが盛ん」「地域・地方応援型が多い」「社会貢献型が多い」などの特徴があります。プロジェクトに合ったサイトを選ぶことが重要です。
タイトル、目標金額、開始時期、リターンなどを書いた企画書をクラウドファンディングの公式サイトへ提出します。
企画書は、審査を経てプロジェクト掲載の可否が決定されます。
クラウドファンディングサイトに登録し、プロジェクトページを作成します。プロジェクトの内容、目標金額、リターン(支援者への返礼)など企画書で記載した内容に加え、画像や動画などを掲載し、プロジェクトの魅力を効果的に伝えましょう。
プロジェクト実行後
SNSやメールなどを活用して、プロジェクトを拡散し、支援者を集めます。プロジェクトの魅力を効果的に伝え、共感を得ることが重要です。
目標金額に達した場合、支援者から集まった資金を受け取ることができます。
集まった資金を活用して、プロジェクトの内容を実行します。製品開発、サービス提供、イベント開催など、プロジェクトの内容によって様々な実行方法があります。
支援者に約束したリターンを制作し、提供します。これには、製品の製造、特典の準備、コンテンツの作成などが含まれます。
プロジェクトの始め方に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
クラウドファンディングの歴史
クラウドファンディングは、インターネットの普及によって近年注目を集めている資金調達方法ですが、その歴史は意外と古く、様々な形態で昔から存在していました。ここでは、クラウドファンディングの歴史を海外と日本に分けて、初心者でも分かりやすく解説します。
海外のクラウドファンディング
- 17世紀初頭:書籍印刷の資金調達
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イギリスの書籍編集者であるジョン・テイラー氏は、17世紀初頭に書籍の印刷資金を募るために、寄付者に書籍に名前を掲載する権利を提供しました。これは、現代の購入型クラウドファンディングの初期形態と言えるでしょう。
- 1886年:自由の女神像台座建設
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アメリカ合衆国の独立100周年を記念してフランスから贈られた自由の女神像。その台座建設資金が不足したため、新聞社「ニューヨーク・ワールド」のジョセフ・ピューリツァー氏は、読者から寄付を募るキャンペーンを実施しました。これは、寄付型クラウドファンディングの成功例として有名です。
- 2001年:初のクラウドファンディングプラットフォーム「ArtistShare」
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2001年、アメリカで初のクラウドファンディングプラットフォーム「ArtistShare」が誕生しました。このサービスは、アーティストが音楽制作の資金を募り、ファンが支援する場を提供しました。
- 2008年:Indiegogo、2009年:Kickstarterの登場
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2008年にIndiegogo、2009年にKickstarterが設立されました。これらのプラットフォームは、クリエイティブなプロジェクト全般を支援し、現在では世界最大級のクラウドファンディングサービスへと成長しています。
日本のクラウドファンディング
- 1180年:東大寺再建のための勧進
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鎌倉時代以前、僧の重源は、源平の争乱で焼失した東大寺と大仏の再建費用を募るために、全国各地を回り寄付を募りました。これが、日本におけるクラウドファンディングの原型と言えるでしょう。
- 2011年:東日本大震災復興支援
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2011年の東日本大震災をきっかけに、復興支援を目的とした寄付型クラウドファンディングが急速に普及しました。
- 2011年:READYFOR設立
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2011年、日本で最初のクラウドファンディングプラットフォーム「READYFOR」が設立されました。その後、CAMPFIRE、Makuake、Motion Galleryなど、様々なプラットフォームが登場しています。
- 2014年:金融商品取引法改正
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2014年、金融商品取引法が改正され、投資型クラウドファンディングが解禁されました。
- 現在
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現在、日本には約40社のクラウドファンディング専門業者が存在し、自社でウェブサイトを開設している企業や自治体も60社ほどあるとされています。
クラウドファンディングの種類
一口に「クラファン」と言っても、商品の先行販売のような形式から寄付のような形式まで、様々な種類があります。クラファンを利用する前に、どのような種類があるのか理解しておきましょう。
- 購入型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- 融資型クラウドファンディング
- 株式型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディング
最も一般的なクラウドファンディングのタイプです。支援者はプロジェクトに資金を提供する代わりに、報酬や商品を受け取ります。
例えば、新製品のガジェット、アートプロジェクト、音楽アルバムの制作など、広範なジャンルに及びます。
寄付型クラウドファンディング
支援者はプロジェクトに対して寄付を行いますが、物理的な報酬を期待せず、助けたいという善意で行うクラウドファンディングのタイプの1つです。プロジェクトによっては、お礼として手紙や写真などが送られることもあります。
融資型クラウドファンディング
個人や企業が特定のプロジェクトや目的のために資金を借り入れることができるクラウドファンディング形態の1つです。個人から集めた資金を融資するという点が特徴的で、購入型や寄付型とは異なり、利息という金銭的なリターン利息を得ることができます。
株式型クラウドファンディング
投資家はプロジェクトや企業に資金を提供し、その見返りとして株式や企業の一部の所有権を受け取ります。これは通常、スタートアップや成長中の企業が資金を調達するために使用されます。
クラウドファンディングのメリット・デメリット
クラウドファンディングは、プロジェクトを企画・実行する実行者と、プロジェクトを応援・支援する支援者双方にとって、様々なメリットとデメリットをもたらします。ここでは、実行者と支援者それぞれの視点から、クラウドファンディングの利点と欠点を詳しく見ていきます。
実行者のメリット・デメリット
- 実行者のメリット
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- 資金調達の可能性が広がる
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従来の融資や補助金では調達が難しかったプロジェクトでも、多くの人から小口の資金を集めることで実現できる可能性が高くなります。
- 市場の反応をテストできる
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商品やサービスが市場に出回る前に、ユーザーの反応やニーズを把握することができます。
- ファンを獲得できる
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プロジェクトを応援してくれた支援者とは、その後も長く関係を築くことができます。
- 知名度を上げられる
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メディアに取り上げられたり、SNSで拡散されたりすることで、プロジェクトや実行者の知名度を上げることができます。
- 実行者のデメリット
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- 目標達成のプレッシャーがある
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目標金額を達成しなければ、資金を受け取ることができず、プロジェクトが中止になる可能性があります。
- 多くの時間と労力が必要
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プロジェクトの企画、準備、運営、支援者への対応など、多くの時間と労力が必要です。
- リスクがある
-
プロジェクトが失敗したり、トラブルが発生したりするリスクがあります。
- 手数料がかかる
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クラウドファンディングサイトを利用する場合、手数料がかかります。
支援者のメリット・デメリット
- 支援者のメリット
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- 新しい商品やサービスの誕生に貢献できる
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プロジェクトによっては、支援者限定の限定品や特典を入手することができます。
- 限定品や特典を入手できる
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プロジェクトの企画、準備、運営、支援者への対応など、多くの時間と労力が必要です。
- クリエイターや起業家などを応援できる
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自分が好きなクリエイターや起業家などを応援することで、彼らの活動を支援することができます。
- 社会貢献できる
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社会課題解決に取り組むプロジェクトを支援することで、社会貢献することができます。
- 支援者のデメリット
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- 期待したリターンを得られない可能性がある
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プロジェクトが失敗したり、トラブルが発生したりするリスクがあり、期待したリターンを得られない可能性があります。
- 資金を失う可能性がある
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特に、株式型や貸付型クラウドファンディングでは、投資した資金を回収できないリスクがあります。
- 時間と手間がかかる
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プロジェクトをリサーチしたり、支援したりするのに、時間と手間がかかります。
- 詐欺に巻き込まれるリスク
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プロジェクトの中には支援金を目的のために使わず、詐欺を行う事例が起きています。
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クラウドファンディングの詐欺事例に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
クラウドファンディングの種類によりメリット・デメリットはさらに細分化されます。各クラウドファンディングごとのメリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
目標設定・プロジェクトゴールの設定方法
クラウドファンディングプロジェクトの成功には、明確な目標設定が不可欠です。プロジェクトのゴールや目標金額を適切に設定することで、支援者の関心を引き、プロジェクトを円滑に進めることができます。
ここでは、効果的な目標設定とプロジェクトゴールの決定方法について、具体的なポイントを解説します。
プロジェクトゴールの設定
プロジェクトゴールとは、プロジェクトを通じて達成したい具体的な成果のことです。プロジェクトの目的とビジョンを明確にした上で、以下のポイントを考慮して設定しましょう。
- プロジェクトの目的とビジョンを明確にする
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なぜこのプロジェクトを行うのか、どのような成果を達成したいのかを明確にする。
- 支援者にとって魅力的なリターンを設定する
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支援者が応援したいと思えるような魅力的なリターンを用意する。
- キャンペーン期間を適切に設定する:
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短すぎると支援者を獲得する時間が不足し、長すぎると支援者の熱が冷めてしまう可能性がある。
目標金額は慎重に設定する
目標金額は、高すぎると達成が難しく、低すぎると十分な資金を集められない可能性があります。適切な目標金額を設定するため、以下のポイントを考慮して設定しましょう。
- 必要な資金を具体的に計算する
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プロジェクトに必要な経費、リターン費用などすべて考慮する。
- 過去の類似プロジェクトの目標金額を参考にする
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過去の類似プロジェクトの成功事例を参考に、適切な目標金額を設定する。
- 支援者にとって魅力的な金額にする
-
支援者が応援したいと思える金額にする。
適切な目標金額の決め方に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
SMARTな目標を設定する
プロジェクトで達成したいゴール、目標金額が決定したら、SMARTな目標設定になっているかチェックしましょう。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Relevant(関連性がある)
- Time-bound(期限がある)
の頭文字を取ったものです。
- Specific(具体的)
-
具体的な数値や内容で目標を設定する
- Measurable(測定可能)
-
達成度を測定できる指標を設定する
- Achievable(達成可能)
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過去の実績や市場規模などを考慮し、現実的に達成できる無理のない目標を設定する
- Relevant(関連性がある)
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プロジェクトの目的達成に貢献するような関連性のある目標を設定する
- Time-bound(期限がある)
-
具体的な期限を設定することでプロジェクトの進捗状況を明確にし、支援者のモチベーションを高める
これらの要素を意識することで、支援者にとって明確で魅力的な目標となります。
クラウドファンディングの成功事例
クラウドファンディングは多様なプロジェクトの実現に貢献しています。ここでは、様々な分野で注目を集めた成功プロジェクトをご紹介します。これらの事例から、効果的なプロジェクト設計や支援者との共感を得るポイントを学んでいきましょう。
ありそうでなかったクリエイターの秘密兵器
プロジェクト名:TourBox Elite:クリエイターの究極Bluetoothコントローラー
片手で操作できるBluetoothコントローラーです。お絵描きソフトや写真編集ソフト、画像編集ソフト、動画編集ソフトの作業を効率化し、クリエイティブ作業の時間短縮に貢献すると話題になりました。
個人のクラウドファンディング成功事例・お店の運営資金
プロジェクト名:めちゃくちゃ美味しいビリヤニをみんなに食べさせたい。それだけ!
東京・神田にあるビリヤニ専門店「ビリヤニ大澤」の運営資金を集めるためのプロジェクトで、総額13,592,111円の支援が集まりました。
プロジェクトページには、ビリヤニを作ることになった経緯、コロナ禍を経ての葛藤、ビリヤニにかけるこだわりや情熱を感じさせる内容が盛り込まれています。
歴史と文化を守るプロジェクト
プロジェクト名:地球の宝を守れ|国立科学博物館500万点のコレクションを次世代へ
コロナ禍や光熱費、原材料費の高騰によって、国立科学博物館に保管されている標本・資料を収集・保管するための資金難を救うために立ち上げられたプロジェクトです。
最終的に56,584人から916,025,000円の寄付が集まりました。
資金調達によりソフト開発からリリースへ
プロジェクト名:FinTech最前線!!! 経理業務の95%の削減を目指す!
株式投資型のクラウドファンディングサービス・FUNDINNO(ファンディーノ)において、2017年に行った2回の資金調達により、延べ384人から、合計で7,435万円の資金調達を達成。Bank Invoiceは請求書原本そのものを電子化して共有するソフトを開発、リリースを行いました。
結論(Conclusion)
クラウドファンディングは、個人の夢や革新的なアイデア、社会的価値のあるプロジェクトを実現する強力なツールです。その基本的な仕組み、歴史、種類、メリット・デメリットを理解し、適切な目標設定とプロジェクトゴールの策定を行うことが成功への鍵となります。成功事例から学べるように、明確なビジョンと魅力的なリターンを設定すること、効果的な情報発信が重要です。
クラウドファンディングで夢を叶えるために、ぜひこれらのポイントを参考にしてみてください。ただし、目標達成のプレッシャーや多大な労力も伴うため、慎重な準備と実行が求められます。
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