盛岡の百貨店がクラファンで2300万円の支援|カワトク×ヘラルボニー

昔通っていた百貨店が閉館してしまったけど、百貨店が生き残る道ってないのかな?

そんな厳しい状態を解決できるのが、クラウドファンディングだよ。

大手ECサイトの台頭、郊外型ショッピングモールの増加、そして人口減少。地方の商業施設にとって厳しい時代が続いています。新規事業を考える経営者、地方都市で事業を営む経営者なら、資金調達の難しさや宣伝の難しさをよく知っていることでしょう。

そんな課題を解決する一つの手法として、クラウドファンディング(以下、クラファン)は欠かせない選択肢となっています。岩手県盛岡市の老舗百貨店・川徳が、障害のあるアーティストの作品を軸に事業を展開するヘラルボニーと組んで実施したクラファンが、大きな注目を集めました。目標の1,000万円に対して、最終的に約2,359万円もの支援が集めたのです。

なぜこのプロジェクトは多くの人の心を動かしたのか?
その成功の裏側にある秘訣を、これからクラファンに挑戦したい中小企業の経営者や個人事業主の方にも分かりやすく解説します。

【豪華・LEAGUEニュースレター】限定プレゼントのご案内

このメディアを読んでいただいている方限定で、マーケティング・ブランディングの実践ノウハウを詰め込んだ特典を、期間限定で無料公開しています!

今回ご用意したのは──

  • ファンに選ばれるブランド作りの戦略図解シート(PDF)
  • プロが使う!競合に埋もれない企画立案チェックリスト
  • 売上と信頼を両立させるコンテンツ設計の原則レクチャー動画

これらをすべて、公式LINE登録者限定ページにて公開中です!

目次

川徳百貨店×ヘラルボニーがクラファンを行った理由と結果

参照:盛岡の地に新しいシンボルを、みんなで。カワトクとともに、(READYFOR

まず、この注目すべきプロジェクトがどのようなものだったのか、その背景と結果を紹介します。

創業150年超の老舗が選んだ挑戦という道

川徳百貨店は1866年創業。盛岡の中心街で150年以上にわたり、地域の人々に愛され続けてきた老舗です。多くの市民にとって街の象徴とも言える存在でした。しかし、時代の変化は容赦なく訪れます。

地方百貨店を取り巻く環境は年々厳しさを増し、全国各地で閉店のニュースが相次いでいます。そんな状況下で、川徳が選んだのは守りではなく攻めの姿勢でした。

2024年10月、川徳はヘラルボニーとタッグを組み、クラファンプロジェクト「盛岡の地に新しいシンボルを、みんなで。カワトクとともに、」をスタートさせました。

ヘラルボニー:多様性を価値に変える企業

参照:盛岡の地に新しいシンボルを、みんなで。カワトクとともに、(READYFOR

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」を理念に掲げ、障害のあるアーティストの作品を社会に広める活動を展開している企業です。単にアート作品を販売するだけでなく、その作品をプロダクトデザインに落とし込み、企業とのコラボレーションなども積極的に行っています。

多様性や個性を尊重するこの姿勢は、現代社会の価値観と強く共鳴します。川徳は、このヘラルボニーの理念を百貨店という場所で体現することで、新しい文化的価値を地域にもたらそうと考えたのです。

プロジェクトの具体的な内容

クラファンの目的は、盛岡市中心街にある「パルクアベニュー・カワトク」1階のヘラルボニー店舗を全面リニューアルすることでした。内装の刷新はもちろん、広報プロモーション、販促企画を含めた総合的な文化発信拠点への生まれ変わりを目指しました。

特に注目されたのが、ISAI PARKという新しい空間づくりの構想です。これは商品を売るだけの場所ではなく、ヘラルボニー初となるカフェを併設することで人々が集い、文化を体験できる行く理由がある場所を作るというコンセプトがあります。

本クラファンは百貨店の新しい在り方を示す試みでした。

目標を大きく超えた支援の輪

参照:盛岡の地に新しいシンボルを、みんなで。カワトクとともに、(READYFOR

当初設定された目標金額は1,000万円。しかし、プロジェクト開始後すぐに多くの支援が集まり、10日目で即目標を達成。続けて、ネクストゴールとして3,000万円が掲げられました。

終了までのラスト1週間では、プロジェクトへの関心をさらに高めるため、シークレットゲストとして著名人からの応援メッセージが次々と公開されました。福田萌さん、日食なつこさん、平熱さん、堀井美香さん、岸田奈美さん、くどうれいんさんといった各界で活躍する方々が、プロジェクトへの賛同を表明したのです。

参照:盛岡の地に新しいシンボルを、みんなで。カワトクとともに、(READYFOR

最終的な結果は、支援者数1,252人、総額2,359万5,000円。目標を2倍以上も上回る支援が集まりました。この数字は、地域だけでなく全国から多くの共感が寄せられたことを示しています。

クラファンの基本とオリジナリティあふれるリターン事例

クラファンの基本的な流れは、意外とシンプルです。

クラファンの基本と流れ

クラファンを簡潔に説明すると、「インターネットを通じて「こんなことをやりたい!」と発信し、それに共感した人たちから少しずつ資金を集める仕組み」です。

従来の銀行融資との大きな違いは、審査の厳しさやスピード感。銀行だと事業計画書を作って、審査を受けて…と数週間から数ヶ月かかることも珍しくありません。一方クラファンなら、アイデアと熱意次第で、数日で目標額に到達することも可能です。

クラファン実施までの主な流れは、以下の通りです。

STEP
企画立案:目的を明確にする

「何のために資金を集めるのか」というプロジェクトの核を固めます。例えば、新商品の開発費用・新店舗の開店資金など、具体的で共感を呼びやすいテーマを設定することが成功への第一歩です。

STEP
魅力的なリターン(お返し)の設計

支援してくれた人への感謝のしるしである「リターン」は、プロジェクトの魅力を大きく左右する重要な要素です。商品やサービスだけでなく、アスルクラロ沼津の事例のように、その事業者だからこそ提供できる「特別な体験」は非常に人気があります。

STEP
プラットフォームへの掲載と情報発信

プロジェクトの準備が整ったら、CAMPFIREやMakuakeといった専門のプラットフォームに登録し、プロジェクトページを公開します。そして公開後は、SNSやプレスリリース、既存顧客へのメルマガなどを活用し、一人でも多くの人にプロジェクトの存在を知ってもらうための地道な情報発信が不可欠です。

川徳×ヘラルボニーのリターン設計が秀逸だった理由

クラファンで重要なのがリターン(支援者への返礼品)の設計です。リターンは単なるお礼の品ではなく、プロジェクトの世界観を体現し、支援者に特別な体験を提供するものである必要があります。

川徳×ヘラルボニーのプロジェクトでは、実に多様なリターンが用意されました。

物品系リターンの工夫

アート作品をデザインに落とし込んだオリジナルバッグやファブリックパネルなど、ヘラルボニーならではの商品が並びました。これらは単なるグッズではなく、障害のあるアーティストの作品を日常生活に取り入れられるアート作品です。

例えば、1万円のリターンとして用意された「ヘラルボニー サブバッグ」は、買い物やトートバッグとしても使いやすく、日常のスタイリングに取り入れられるデザイン性を持っています。単なるエコバッグではなく、持つこと自体がアート体験になる工夫が施されていました。

参照:巡れ滋賀を、ビックリマンと共に!!道の駅、滋賀周遊キャンペーンを盛り上げたい!!(CAMPFIRE

さらに注目すべきは、15,000円の「ヘラルボニー アートファブリックパネル」です。このパネルは約A4サイズのキャンバスにヘラルボニー作家の作品をプリントしたもので、本クラファン限定のアートでした。

参照:巡れ滋賀を、ビックリマンと共に!!道の駅、滋賀周遊キャンペーンを盛り上げたい!!(CAMPFIRE

特筆すべきはその再現性の高さです。作家の絵筆をすぐそこに感じられるクオリティにこだわり、まるで原画を所有しているような体験を提供しました。

しかも温度・湿度管理の必要がなく、水拭きでイージーケアが可能という実用性も兼ね備えています。アートは敷居が高いと感じる人でも、気軽に生活に取り入れられる設計になってます。

体験型リターンの充実

このプロジェクトで特に注目すべきなのが、体験型リターンの充実ぶりと、その巧みな価格設定です。

15,000円では「オープニングパーティー(デイタイム)」への招待が用意されました。店舗改装後の空間を最初に体験できる特別感があります。

参照:巡れ滋賀を、ビックリマンと共に!!道の駅、滋賀周遊キャンペーンを盛り上げたい!!(CAMPFIRE

さらに30,000円のリターンでは「ディナーパーティー」にグレードアップし、川徳の斎藤取締役とヘラルボニーの松田共同代表によるトークイベントにも参加可能でした。プロジェクトの裏側や今後のビジョンを直接聞ける機会は、支援者にとって何物にも代えがたい価値を持ちました。

また、百貨店という場所を活かしたイベントリターンも用意されました。

参照:巡れ滋賀を、ビックリマンと共に!!道の駅、滋賀周遊キャンペーンを盛り上げたい!!(CAMPFIRE

50,000円の「カワトク SORABAウォールペインティング」では、パルクアベニュー・カワトク屋上でのウォールペインティング体験に参加できます。自分の手で百貨店の空間づくりに関われる、まさに「プロジェクトの共創者」になれる体験です。

100,000円の「カワトク SORABAナイトキャンプ」に至っては、百貨店の屋上でナイトキャンプができるという、通常では絶対に体験できない特別な時間が提供されました。盛岡の夜景を眺めながら過ごす一夜は、参加者にとって一生の思い出になるでしょう。

この設計によって、支援者は単に「モノをもらう」だけでなく、「盛岡の文化を支えている」「新しい場所づくりに関わっている」という強い実感を得られました。クラファンが単なる商取引ではなく、コミュニティづくりの手段として機能した好例です。

川徳百貨店|ヘラルボニーの成功事例から見る、成功するクラファンのコツ

川徳とヘラルボニーの事例から、私たち中小企業経営者が学び、自社のプロジェクトに応用できる成功のコツを3つのポイントに絞って解説します。

共感を呼ぶ理念とストーリーで巻き込む

成功するクラファンは、単にお金が必要ですと訴えるのではありません。「なぜ、この事業をやるのか」という熱い想い、つまり理念やストーリーこそが人々の心を動かします。

今回のケースでは、

  • 川徳百貨店の持つ街の象徴という歴史的価値
  • ヘラルボニーが掲げる多様性の尊重という現代的な理念

この二つが掛け合わさり、老舗百貨店の再生と新しい文化の創造という、誰もが応援したくなる強力な物語を生み出しました。商品を売るのではなく、共感できるテーマをブランドの核に据えること。これが、支援者をファンに変え、自然な形で巻き込んでいくための第一歩です。

ビジネスへの応用例
  • 自社の歴史や地域とのつながりをどう語れるか?
  • 事業を通じて社会にどんな価値を提供したいのか?
  • 顧客や地域の人々の共感を呼べる理念は何か?

体験と参加感で支援者を最高の仲間にする

支援者を単なるお客様として扱うのではなく、プロジェクトを一緒に進める仲間として巻き込む工夫が、成功を大きく左右します。

そのための最強の武器が、前述した体験型リターンです。百貨店の屋上で壁画を描いたり、キャンプをしたりといった体験は、お金を出してモノを買うという消費行動を遥かに超え、忘れられない思い出というプライスレスな価値を提供します。

また、経営陣と直接語り合えるディナーパーティーはまたとない機会であり、長期的なファン(ロイヤルカスタマー)へと転換させる非常に効果的な仕掛けです。

このように、支援者が物語の登場人物になれるようなリターンを設計することが、熱狂的なコミュニティを生み出す鍵となります。

ビジネスへの応用例
  • 自社ならではの「特別な体験」は何か?
  • 地域の資源や人脈をどう活かせるか?
  • 支援者が「参加している」と感じられる仕掛けは何か?

目的を言語化し、オープンな発信を続ける

なぜこのプロジェクトを行うのか、そしてその先にどんな未来を描いているのか。この企画の目的を、誰にでも伝わる明確な言葉で語ることが不可欠です。軸となるストーリーがなければ、支援の輪は広がりません。

そして、プロジェクト期間中はSNSや公式サイトで進捗を丁寧に、そして正直に発信し続けることが重要です。支援者は、自分のお金がどのように使われ、プロジェクトがどう進んでいるのかを知りたいと思っています。

また、終盤には著名人からの応援メッセージが段階的に公開されるなど、情報発信のタイミングも計算されていました。福田萌さんをはじめとする各界の有名人が賛同を表明したことで、プロジェクトへの信頼度が大きく向上し、最後の追い込みにつながったのです。

プロセスをオープンにすることで、支援者との間に信頼関係が生まれ、将来に渡った関係性を築けます。

ビジネスへの応用例
  • プロジェクトの進捗をどのように発信するか?
  • 地域の行政や著名人、メディアとどう連携するか?
  • 支援者が「参加している実感」を得られる仕掛けは何か?

まとめ

川徳×ヘラルボニーの挑戦は、「資金調達×文化構築×来店動機づくり」を同時に達成したクラファンの好例でした。

支援を集めるポイント
  • 理念と共感の力:単に商品やサービスを売るのではなく、強い理念を持ち、それに共感する人々を巻き込むこと。
  • 体験とコミュニティの重視:モノを提供するだけでなく、参加する喜びや特別な体験を設計すること。
  • 透明性と信頼の構築:プロセスを見える化し、著名人や地域の力を借りながら信頼を積み上げること。

もしあなたが中小企業の経営者や個人事業主として、新しい挑戦を考えているなら、クラファンは有力な選択肢です。それは資金を集める手段であると同時に、あなたのビジョンに共感する仲間を見つけ、コミュニティを形成する仕組みでもあります。

本記事を読んで、クラファンって面白そうと感じたひとは、ぜひともクラファンに向けた準備を始めてください。「クラファンっていっても、何から初めたらいいのかわからいよ…」という方は、弊社LeaguEにおまかせください。

クラファンで人気となりやすいプロジェクトの特徴やリターンの設計、プロジェクトページの作り方など、LeaguEではクラファンのフルサポート体制を整えています。クラファンの企画から実施まで、無料でご相談を承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

公式メールで受け取りたい方はこちら

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

【CF NEWS運営担当&ライター】
LEAGUEではクラウドファンディング専門メディアの運営を担当。
プロジェクトページの執筆をはじめ、物販ノウハウを学べる教育用コンテンツの制作など、多角的に情報発信を担っている。
「初心者でも理解しやすく、すぐに実践できる記事づくり」が信条。
読者に寄り添い、わかりやすく丁寧なコンテンツ設計をおこなっている。

コメント

コメントする