近年、クラウドファンディングは大企業にとっても重要な市場テストの場となっています。既存ブランドの信頼性を活かしつつも、“共感”という軸で消費者とつながるこの手法は、単なる販売以上の意味を持つようになりました。
本記事では、クラウドファンディングプラットフォームMakuakeで話題を呼んだ、キリン・伊藤園・中田英寿氏×SUWADAの3社によるプロジェクトを紹介。それぞれがいかにして支援者の心を動かし、目標金額を大きく超える支援を集めたのか、その背景を解説します。
20年後に“約束の乾杯”を。キリンの「人生を共に生きるウイスキー」

キリンが立ち上げたこのプロジェクトは、20年後に開けて乾杯することを前提とした特別なウイスキー。支援時点では原酒の段階で、これから20年かけて熟成され、完成品が届けられます。目標金額1億円という高額にもかかわらず、最終的には2億6000万円以上を集めるなど、大きな反響を呼びました。支援者は2,500人超。
このプロジェクトの成功要因は、ウイスキーという商品に「時間」と「想い」を掛け合わせた点です。単なる高級ウイスキーではなく、「20年後に誰と飲むか」を支援者自身に想像させるストーリーテリングが秀逸でした。人生の節目や家族の記念に結びつく“未来の体験”という視点が、多くの共感と支援を集めることにつながったのです。
車のシート職人が本気で作った、持ち運べる“座り心地”
お茶や飲料で知られる伊藤園が、まさかの「炊飯器」を発表し話題を呼びました。名前は「MUGIMUG(ムギムグ)」。100%大麦ごはんを美味しく炊くことに特化した炊飯器で、目標金額100万円に対して、約1,000万円の支援を集めました。支援者は1,000人を超えています。
伊藤園は健康志向の飲料で知られるブランド。今回の炊飯器も、“糖質を抑えておいしく満足できる食事”という健康ニーズに対応した提案でした。また、炊飯器のデザインもシンプルで生活空間に馴染みやすく、若い層や単身世帯にも受け入れられました。異業種からのプロダクト提案でありながら、ブランドとしての信頼性が支援の後押しになった好例です。
中田英寿×SUWADA。日本酒を開ける体験をアップデート
新潟の老舗刃物メーカー・SUWADAと、元サッカー日本代表の中田英寿氏がコラボレーションしたのが「SAKE BOTTLE OPENER」。日本酒のボトルキャップを、優雅かつスムーズに開けられる専用オープナーで、約950万円の支援を集めました。支援者は700人以上。
本プロジェクトのポイントは、日本酒という伝統文化に“美しく開ける”という体験価値を加えたこと。SUWADAの職人技と中田氏の感性が融合したことで、日常の“ちょっとした動作”を洗練された所作へと昇華させました。ギフト需要にもマッチし、日本酒愛好家だけでなく“いい道具”を求める層からの支持も集めた点が成功の鍵となっています。
結論(Conclusion)

今回紹介した3つの事例に共通するのは、「ブランド力」に頼り切らず、クラウドファンディングだからこそ可能な共感・参加型の設計を取り入れている点です。プロダクトの“機能”だけでなく、“体験価値”や“ストーリー”を伝えることで、大企業であっても熱量の高い支援者を獲得することができています。
クラウドファンディングはもはや新興ブランドのためだけの手段ではなく、信頼と実績を持つ企業が、ユーザーとの接点を深め、新しい市場を切り開くための重要なプラットフォームとなっているのです。
今回は大手企業がおこなったプロジェクトを紹介しましたが、クラウドファンディングは中小企業から個人単位でも行うことができます。とはいえ、知識があっても実際にどのようにプロジェクトを進めるかイメージが湧かないこともあります。そんな時こそ、専門家のアドバイスが力になります。LEAGUEでは、クラウドファンディングの企画から実施まで、無料でご相談を承っております。プロジェクトの成功に向けて、私たちの経験とノウハウをお役立てください。まずはお気軽にご連絡ください。
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